競売や公売で物件をウォッチすること約1年。条件に合う建物付き土地が関東信越国税局の公売にかけられたので入札し無事落札。占有解除までの記録です。趣味のための場所として入札したので自宅用とかではありません。
スーモやアットホームで探して不動産屋さんの仲介で買う一般的なハナシではなく、住宅ローンや税金の滞納により公的機関に差し押さえられた不動産を購入しました。正確には購入ではなく競落、入札して最高価申込者=落札者になることで所有権を得ることができます。ここでは詳しく書きませんが競売が裁判所、公売が役所の管轄です。市や国税局が開催する公売は以前は役所のHPに静かに掲載、もっとひどいと役所前の掲示板に貼るだけだったようですが今は広く周知されるようになってます。
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競売公売どちらにしても買受人が自分で動かなければならないことが多い反面、開始価格は基本的に相場が考慮されないため市場価格よりも安価で手に入れられる可能性があります。どちらもリスク大きいですが、競売より公売のほうが悪い方向に転んだ時の手間がかかるため敬遠されがちな印象です。
今回入札した物件は関東信越国税局の管轄でした。Covid-19以降入札書は郵送で受け付け、開札結果もネットや電話で確認できるので国税局まで足を運ばなくても済むんです。なのでホントは立ち会わなくてもいいのですが公売初入札&開札なので現地に行ってきました。
さいたま新都心で降りて少し歩いて国税局へ。2階の総合受付で入館証をもらって、さらに20階の総合受付でも書類記入。今回の開札は不動産公売の公告3つ分、案件数も50近くあるので混んでたらどうしようと思って会場の会議室に向かうも「あれ?ちっさくない?」と。現地にいたのは自分含めて9名だけ。4名がスーツ着て業者さんかなという雰囲気、4名がフツーのおばちゃん2名含むペアの一般人。担当の税務署の人の雰囲気も合わさって会場の空気は中学生の時に傍聴に行った東京地方裁判所のように重くなかったです。ちなみに入退出自由でした。
ちなみに参考までに今回のタイムテーブルは
実際には40分くらいですべての開札が終了。ネット情報と違うのは最高価の人しか発表なかったこと。3位から順番に呼ばれることも何件の入札があったかの発表もなく、10時ちょうどにドサッと投票箱みたいのを開けて、
予想外だったのは手続きの説明が最後にあったこと。自分とほかもう一組のご夫婦が会場にいた落札者だったので一緒に残って聞いてました。隣でしゃべっている金額が1ケタ万円だったので農地かな?終始緊張されていた様子。手続きもわかりやすいので特に不安要素はありません。というより落札した側にとてはこの後の占有解除のほうが問題です。
私が落札したのは公売物件ですが競売とも共通するところなので情報は豊富です。といっても公売の場合3点セットはありませんし裁判所みたいに事前調査に執行力があるわけでもないので、前所有者の情報は登記簿と固定資産課税台帳しかありません。動産の権利は公売とは別なので、前所有者に処分してもらうなり権利を放棄してもらう必要があります。勝手に処分(任意解除)は最後の手段。競売で買受人が勝手に処分して前所有者が訴えて慰謝料含めて賠償金300万円なんて判例もあります。まぁこのケースは仏壇と位牌があったと記憶しているので慰謝料が高くなってますが。なんであれトラブルの元なので任意解除はほんとに最後の手段です。
幸い私の物件は登記簿と課税台帳の住所が一致していてここに住んでると断定できたのでコンタクト開始です。いろんなパターンが考えられますが、私の場合時間かけてもいいので良好な関係を築きたいなと考えてました。前オーナーが持っている鍵や情報(お隣さんは〇〇な人)が欲しいですし、うまくいけば前回売買の際の書類を手に入れるかもですからね。
まずは丁寧な手紙と「残存動産所有権放棄書」を送ります。お手紙はこちらの連絡先と住所はもちろんのこと、なんでお宅の住所を知っているかの理由を忘れずに書きます。なんで個人情報知ってるの?と猜疑心持たれても面倒ですからね。放棄書返送用のレターパックも同封しておきます。この時追跡番号を控えておくと返送してもらえたか無視なのかがわかります。こちらから送るときは特定記録で届いたことを確認して記録を残しましょう。
丁寧なお手紙が効果なく返信してもらえなかった場合は金銭的インセンティブがポピュラーな手段でしょうか。ググる限り2~5万円の印象です。私の場合1回目の手紙がスルーされたので「2万円お支払いします」とちらつかせましたがスルーされました(理由は後ほど)。音沙汰ない場合、占有移転禁止仮処分 ⇒ 建物明け渡し訴訟 ⇒ 強制執行となるのでそれを考えるとにんじんは多少大きくてもよい気もします。
結論から書くと前所有者と直接お会いし、なんとかお互いにハッピーな形で占有解除に至りました。とりあえず2回お手紙送っても無視だったので直接物件へ。1回目には会えず敷地内を立ち入るだけだったのですが2回目で運よく遭遇。お手紙の中に「〇月〇日までにご入用のものを移動いただけると幸いです」と記載していたのが功を奏したようで、焦って片付けしてくれていた最中でした。
前所有者は75歳のおじいちゃん、大工さんでした。まぁガラが悪いというか、マナーが悪くて話しているだけでも不快というのが最初の印象。タバコを吸いながら軽トラに荷物を積んでましたがこちらが近づいて身分明かすと文句タラタラ。タバコを地面に投げ捨てて(いやもうウチの土地なんですけど)一方的に期限決めやがってと食って掛かってくる始末。手土産もって丁寧に話ができたらいいなと思ってましたが作戦変更。録画録音していることを伝えて「このままならば強制執行の申立てを裁判所にします」と伝えたところ急におとなしくなりました。どうやら以前競売にもお世話になったことがあるようで強制力はよくわかっている様子。同情を示したうえで「残置物どかすのに困っているなら手伝うし2か月程度なら待ちますよ」と提案しました。「人を動かす」を読んどいてよかった。権利放棄書にハンコ押したくなかったのは単純に2万円が安すぎる(立派な木工機械が4台置きっぱなし)なのと、そもそもレターパックの使い方を知らなかったようです。
最終的に、
というこちらが時間を使う形で占有解除に至りました。何とかなると目途が立って安心したのか土地の境界のことやお隣さんのこと、電気や水道(井戸30メートル!)のことも聞き出すことができたのでヨシとします。ちなみに今回の公売の原因は確定申告が遅れたうえに税金も払える状態じゃなかったからだそうです。ハウスメーカーのプレカットが主流になって仕事が減ってリフォームなど手がけていたけどそれも減ったとか。話聞く限り経験も長いしいい腕してる職人さんと思います。
直接会うまでに競落日から1か月、占有解除(ヤフオクの落札者が取りにくるまで)3か月かかっています。心労もおおきかったですが無事占有解除できたので満足です。あ、工作機械は6万円ちょっとで売れました。元所有者も喜んでると思います。